What we do

プロジェクトストーリー

生活者の声に寄り添い、
技術を磨き続けた先に生まれた、
最高品質のトイレットティシュー
——「Theエリエール トイレット
ティシュー」の開発——

T・M ホーム&パーソナルケア国内事業部 グローバルマーケティング本部
ファミリーケア・ブランドマーケティング部 ファミリーケア第二グループ
エリエールブランドの家庭紙商品のマーケティング、商品企画、プロモーションを担当。

K・T ホーム&パーソナルケア国内事業部 商品開発本部
ファミリーケア商品開発部 ファミリーケアグループ
エリエールブランドの家庭紙商品の開発・設計を担当。

2024年4月、エリエールブランド誕生45周年を記念して発売された「Theエリエール トイレットティシュー」は、圧倒的な柔らかさと肌触りの良さ、耐水性の強さを兼ね備えた最高品質のトイレットティシューです。従来の商品とは全く異なる、高い品質を実現するためにどのような課題があり、そしてどのようにそれを乗り越えたのでしょうか。商品開発に携わった二人の社員に、完成までの道のりを語ってもらいました。

※内容は取材当時のものです

最高品質のトイレットティシューで、 快適なトイレ時間を

「Theエリエール トイレットティシュー」の開発を決定した経緯について、教えてください。

私たちはこれまでも、トイレットティシューの付加価値化を通じて、より便利で快適な生活を過ごせるよう、商品の開発や提案を進めてきました。その中で、生活習慣の大きな変化があったタイミングが、2019年度末から始まった新型コロナウイルス感染症の大流行です。行動制限が長期間にわたって続き、自宅で過ごす時間が増加した結果、「おうち時間をどう快適に過ごすか」が改めて重視されるようになり、そのトレンドは現在でも在り続けていると捉えています。大王製紙としても、快適なおうち時間に貢献できる商品を開発しようと考えて、検討を開始しました。
生活者の方々に調査を実施したところ、多かったのが「トイレの時間を快適なものにしたい」という声でした。そこで「より良いトイレ時間のために、今までにない高品質なトイレットティシューを開発しよう」という着想が浮かび、開発チームが結成されました。
大王製紙ではこれまで、生活者の要望に応えるためにいろいろなトイレットティシューを開発し、世に出してきました。シャワートイレ用に吸水性を高めたものや長尺のもの、消臭機能の付いたものなど、種類は多岐にわたります。
今回の開発では、要望に個別に対応した商品ではなく、多様な要望をオールインワンで叶える、ベーシックでありながら最高品質の商品を作りたいと考えました。
改めて、生活者の方々にトイレットティシューに求める要素についてのヒアリングを行うと、上位となったのが「柔らかさ」と「肌触りの良さ」でした。またシャワートイレの定着もあって、耐水性の強さを求める人もとても多かったです。耐水性を強くするには、紙自体の「丈夫さ」と、水を吸っても破れにくい「吸水性の高さ」の両方が必要となります。
「柔らかさ」「肌触りの良さ」、そして「丈夫さ」と「吸水性の高さ」。これらの要素のすべてを高い水準で達成した最高品質の商品を妥協することなく開発し、生活者に届けることが今回のミッションです。開発担当者としての腕が鳴る、大きな挑戦でした。

困難を極めた、4つの要素の達成 「Theエリエール トイレットティシュー」の開発で、特に大変だったのはどのような点ですか。

「柔らかさ」「肌触りの良さ」「丈夫さ」「吸水性の高さ」の4つをすべて実現させること自体が、とても困難でした。紙は天然由来の繊維を原料としており、繊維の密度を大きくすればするほど固く丈夫になり、逆に繊維の密度を小さくすればするほど柔らかくなります。そのため、特に「柔らかさ」と「丈夫さ」を高い水準で両立させることは至難の業といえます。
例えば、「丈夫さ」と「吸水性の高さ」だけを実現するのであれば、紙を厚くすることが最も簡単な解決手段です。紙を厚くすればその分、繊維の層がたくさん積み重なります。その積層構造が強度を高めるため、紙は固く丈夫になりますし、繊維と繊維の隙間が多く生まれることで、より多くの水分を吸収できます。しかし、結果として「柔らかさ」は失われてしまいます。
4つの要素を高い水準で達成するために、開発チームで長きにわたって検討を重ねました。その中で、最も効果的と思われたのが、柔らかく肌触りの良い紙を2枚重ねて丈夫さを出し、そこに「エンボス加工」を施すことで吸水性も高めるという手法でした。

吸水性を高めるためのカギは、キッチンペーパーから 紙の柔らかさと肌触りの良さを出すために、どのような工夫を行ったのですか。

より柔らかな紙にするために、この商品では再生紙パルプを用いず、針葉樹と広葉樹を専用の配分でミックスしたピュアパルプを100%使用しています。また、スタンダード商品である「エリエール トイレットティシュー」の2倍以上の柔軟剤を配合したことで、柔らかいだけでなくふんわりとした肌触りも実現しました。
柔軟剤によって繊維の隙間が広がる分、紙に厚みが出てしまいましたが、従来の商品よりはるかに柔らかく、肌触りも心地良くなっています。

吸水性を高めるためのエンボス加工とは、どのような技術ですか。

エンボス加工とは、紙に凹凸を作る加工技術のことです。もともとはキッチンペーパーの吸水性・吸油性を高めるために開発された技術で、後にトイレットティシューに転用されたという歴史があります。エンボス加工によって紙に凸凹ができることで、重なった紙と紙の間に大きな隙間が生まれ、そこに水分が吸収されるために吸水性が高くなります。
この加工で吸水性を高めたトイレットティシューとして、2002年発売のロングセラーである「シャワートイレのためにつくった吸水力が2倍のトイレットペーパー」があります。この商品では、エンボス加工した2枚の紙の、凹凸の凸の部分同士を先端で合わせる「スーパーWエンボス加工」を採用しています。紙と紙の隙間がとても大きくなるのでその分、吸水性も向上します。しかし、今回の開発ではこの加工を使うことができませんでした。
トイレットティシューはJIS規格でサイズが定められており、ロールした状態での直径を120mm以内に収めなければなりません。しかし、この商品は従来の紙より厚みがあるうえ、エンボス加工を施すとさらに厚みが増してしまいます。それを直径120mm以内に収めようとすると、長さは通常よりかなり短くなります。
大王製紙のトイレットティシューの長さはダブルですと30mまたは25mが一般的な巻長さであり、何より生活者の皆様は長尺な商品を好む傾向にあります。長さを短くする選択肢を取ることはできず、開発は暗礁に乗り上げました。そうした中で、苦境を打開する鍵となったのが「ネステッドエンボス加工」という技術でした。
この加工もキッチンペーパーの開発で生まれた技術ですが、まだトイレットティシューでは活用されていませんでした。凹凸の凹の部分と凸の部分を重ね合わせて、その隙間に水を保持させるという仕組みです。凹と凸が互い違いになるため、スーパーWエンボス加工と比べて厚みが出ませんし、凹と凸の隙間に多くの水分を吸収できるので、吸水性の高さも保持できるというわけです。この技術により、「シャワートイレのためにつくった吸水力が2倍のトイレットペーパー」に匹敵する吸水性を実現できました。

生産部門と二人三脚で奮闘、 試作品は4万個以上に

残りの要素である、紙の丈夫さについてはどのような工夫を行いましたか。

当初は、紙を2枚重ねることで強度を高めることを想定していました。しかし、この紙は柔らかさを追求したため、2枚重ねるだけではそれほどの強度は得られませんでした。そこで、「シャワートイレのためにつくった吸水力が2倍のトイレットペーパー」でも用いていた「ラミネート加工」を試してみることにしました。
これは2枚の紙を糊で貼り合わせて、強度を高めるという技術です。糊付けするため、柔らかさが失われてしまう欠点があるのですが、ラミネート加工を用いつつ、今までにない柔らかさも備えた仕上がりを目指して、何度も試作を行いました。
今回の開発では、とにかく多くの試作を行いました。ネステッドエンボス加工についても、凹凸を深く入れすぎると紙が破れやすくなりますし、逆に浅すぎると吸水性が低下してしまいます。ちょうど良い凹凸の深さにするための調整に、多くの時間を要しました。商品の完成までに製作した試作品の数は、4万個以上にも及びます。
通常の商品開発における試作品の製作は、最初は小規模な生産設備で行い、最後に実際の生産ラインを用いて、量産に適しているかどうかを確認することが一般的です。しかし、紙の場合はそうはいきません。初期段階の試作から、生産部門の大規模な設備を用いて製造する必要があり、この商品でも同様でした。
また、従来のものとは異なる高品質な商品のため、その量産のために最適化した生産体制を整備することには、大変な苦労があったはずです。生産部門の方々には、開発初期から多大な協力をいただきましたし、生産部門と二人三脚で汗を奮闘したからこそ、4つの要素を高水準で達成できたと実感しています。

最後に気付いた、「香り」の
重要性
4つの要素も高水準で達成でき、遂に商品が完成したということでしょうか。

実はそうではありません。開発の過程で、試作品を社内外の多くの方に検証してもらい、品質評価や課題点の抽出を行いました。その中で、生活者の方から「良い香りがあると、さらに良いかもしれない」という意見が挙がりました。
開発チームは「お尻を拭く」というトイレットティシューの機能に関する部分の追求だけで頭がいっぱいになっていましたが、この意見を聞き、目から鱗が落ちたような気持ちになりました。より魅力的な商品にするために「香り」の要素は不可欠だと思い至り、少し遅れる形で開発が始まりました。
こだわったのは「華やかな香り」です。従来の商品は、安心感のある落ち着いた香りのものが多かったのですが、この商品は上質な位置づけのため、落ち着きを感じさせつつも、気持ちがより華やぐようなフローラルソープの香りを選択しました。
こうした試行錯誤を幾度となく繰り返しながら、「Theエリエール トイレットティシュー」が完成し、2024年4月から発売を開始しました。

生活者の声を反映して、 さらなる高みへ

発売を開始して、生活者の反応はどのようなものでしたか。

実際に購入し、使用した生活者の方々からはとても好評でした。トイレットティシューは生活必需品であるため、価格の安さを最大の選択基準とする生活者が多いのですが、そうした方々にも「品質の高いトイレットティシュー」であるこの商品の存在をアピールでき、高品質な商品を求める層の掘り起こしに、一定程度成功したと感じています。
その一方で、「香りがもっと長く持続して欲しい」という要望も多数いただきました。そこで、新たに持続性の高い香料を用いて、かつ保香性フィルムをパッケージに採用し、より長くフレッシュな香りが保たれる仕様に改良しました。
また、店頭で商品を見て「なぜ価格が高いのだろう」と不思議に思い、購入をためらった方々もいたと聞きました。そこで、店頭に並ぶのを見た時点で品質の高さを即座に理解できるようにするための、パッケージデザインの刷新が必要だと考えました。 香りとパッケージデザインの2点をリニューアルした商品は、2025年9月から発売しています。

大王製紙だからこそ、
生み出すことができた商品
「Theエリエール トイレットティシュー」の開発について、改めてどのように感じていますか。

ネステッドエンボス加工やラミネート加工など、この商品に用いられている技術は、大王製紙の長きにわたる家庭紙開発の中で培ってきたものです。トイレットティシューに限らず、さまざまな家庭紙分野で、担当者たちが何度もトライ&エラーを行い、高い技術力を構築してきました。この商品はそうした歴史の延長線上にあり、大王製紙だからこそ生み出すことができた商品だと思っています。
「生活者の声を徹底的に拾い上げる」というマインドが徹底されていることが、大王製紙という会社の大きな特長だと、開発を通じて改めて実感しました。開発部門でも生活者の方々を集めて、生の声をヒアリングする機会はとても多いですし、営業担当者のユーザー訪問に同行して、自宅にいる生活者の声を直に聞くこともあります。 この商品も「トイレの時間を快適なものにしたい」という生活者の声がヒントになって生まれたものであり、大王製紙だからこそ開発できた商品だと、私も思っています。 トイレットティシューなどの家庭紙は、商品の同質化が進みやすいカテゴリーであり、他社商品との商品の違いを打ち出しにくい面があります。しかし、今後も生活者の声を反映させた商品づくりを貫き通すことで、エリエールブランドは生活者の快適な暮らしを支える大切な存在として、永続的な支持を得られると確信しています。 その一翼を担う者として、これからも生活者に寄り添い、些細な声も逃さずに耳を傾けていきたいです。